朝ドラ「ブギウギ」エールとブギウギというドラマにおいて、戦争に対する描写が異なる点について

NHKの朝の連続ドラマ小説『ブギウギ』は、第14週「戦争とうた」が放映されました。年末年始を挟んで、『ブギウギ』は通常の放送スケジュールに復帰しました。第66話では、特攻隊員として出撃する人々と、彼らを残して苦悩する家族たちの物語が心に残る形で描かれています。主人公のスズ子(演:趣里)は、富山での慰問公演に参加し、「大空の弟」という曲を、戦争で夫を亡くした静枝(演:曽我廼家いろは)に向けて歌いました。同時期に、りつ子(演:菊地凛子)も、訪れた慰問先で特攻隊員たちに向けて「別れのブルース」を情感を込めて歌ったのです。

エールとブギウギというドラマにおいて、戦争に対する描写が異なる点について考察しますと、その主因は両作品の主人公たちの戦争への関与の仕方にあります。

エールでは、主人公である古関裕而さん(ドラマのモデル)が戦時歌謡を数多く発表しており、これらの楽曲は戦意を高める目的を持っていました。このことは、彼が戦争に間接的ではあれ、積極的に関わっていたことを示しています。当時、国民の間で戦争に勝つという意識が高まっていた中で、このような活動は一般的であったと言えます。

このため、ドラマでは戦地での悲惨な現実を主人公に見せることで、彼の内面的な葛藤を描いています。これは、戦後の彼の楽曲に深い意味を持たせるためのもので、視聴者にもその変化を理解してもらうために重要な要素であると思われます。

一方、ブギウギの主人公は、基本的に歌を歌うことが好きで、人々を明るく、楽しくすることを目的に活動しています。彼女の戦争への関わり方は、より受動的であると言えるでしょう。

ドラマと実際の古関裕而さんの違いに関しては、ドラマでは彼が「知りませんでした…」と発言し、戦後「長崎の鐘」を作曲したように描かれていますが、実際の古関さんは自衛隊の隊歌も作曲しており、これが直接軍国主義につながるわけではありませんが、隊員を鼓舞する曲であることは間違いありません。これらの楽曲は最近はあまり演奏されないものの、大きな影響を与えたことは事実です。

また、ドラマの演出については、特攻隊員が主人公に感謝を述べるシーンよりも、歌唱中に搭乗員整列を告げるアナウンスと、最前列に座っていた若い搭乗員が無言で立ち上がり、敬礼して退場するシーンの方が印象的だったと考えられます。無言のシーンは、言葉以上のメッセージを持つことがあります。

予備学生の特攻隊員の川柳には、「ジャズ恋し早く平和が来れば良い/ジャズ恋し彼女恋しと雲に告げ」というものがあります。これは、戦時下の若者たちの心情を反映していると言えるでしょう。

さらに、この作品は、戦時中の空襲被害やそれに対する人々の反応をリアルに描いています。これは、戦前・戦中・戦後のつながりを意識し、反戦のメッセージを強く打ち出している点で他の作品と異なります。主人公たちも、物語を通じて様々な困難に直面し、成長していく様子が描かれています。

戦争によって奪われた日常、平和、そして音楽の中で、ブギウギのスズ子とエールの裕一は、それぞれの立場から戦争に抗い、音楽を通じて人々に勇気と希望を与えてきました。スズ子は国内で、裕一は国外でそれぞれの苦境を乗り越えてきました。戦争を経験していない私たちも、これらの物語を通じて当時の状況を理解し、共感することが重要だと思います。

また、戦争を描いたドラマでは、主人公が「反戦」的な立場を持ち、それに対して戦争を肯定的に捉える人々が悪く描かれがちです。しかし、実際には当時の多くの人々が戦争や軍部を支持していました。

戦争描写に関して、ブギウギは歌を通じて戦争末期の国民に夢や希望、楽しみを伝えることをテーマにしています。これは、戦地で亡くなった家族を持つ人々の心を和らげ、生きる希望を伝えるためのものです。

エールの主人公は戦争終結後、自分が戦争に協力していたことに苦悩します。一方で、羽鳥、茨田、すず子の3人は、戦争が始まったときからその展開に違和感を感じつつも、時代に逆らうことはできず、戦時中を過ごしていました。戦争が終わった後、彼らは自由を実感し、音楽で表現することになります。

敵性音楽に対する態度については、海軍少佐クラスの人々が一概に厳格ではなく、ジャズやブルースを柔軟に受け入れていたという話もあります。しかし、このような描写はドラマの枠組みにそぐわないかもしれません。

このドラマは、定期的に時代背景や日本の国際的な立場を説明することが必要です。そうでなければ、表面的な反戦ドラマになってしまう恐れがあります。

現代においても戦争が続いている地域があることを忘れてはならないでしょう。

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