土佐弁の魅力が全国に広がる「あんぱん」の言葉たち
NHK連続テレビ小説「あんぱん」が放送開始から約1カ月半が経ち、視聴者の間で高知県の方言「土佐弁」が大きな話題となっています。「たまるかー!」や「ほいたらね!」といった言葉が全国に広がりつつある中、番組の「土佐ことば指導」を担当する西村雄正さんにその舞台裏を伺いました。
高知県土佐市出身の西村さんは、俳優として活躍しながら2016年から高知県観光特使も務めています。前作「らんまん」に続いて「あんぱん」でも土佐弁指導を担当することになり、「もう二度とないと思っていたので、オファーをいただいてビックリしました」と振り返ります。
土佐弁といえば「~ぜよ」が有名ですが、西村さんは「ぜよ」に頼りすぎない自然な土佐弁を心がけているといいます。「『ぜよ』は”ここぞ”という時にしか使わないようにしました。地元でも頻繁に使う人は少なく、坂本龍馬も生活上は使っていたと思いますが、実は書いた手紙や書簡には『ぜよ』は一つもありません。”ノーぜよ”なんです」と説明します。
西村さんの仕事は単に台詞を土佐弁に変換するだけではなく、全国の視聴者が理解しやすく、演者が口にしやすい音になるよう調整することも含まれています。「江戸の人でも明治の人でもなく、現代の地元の人が違和感を抱かない土佐弁にすることが僕の仕事で、そのことが作品力アップにつながると考えています」と熱意を語ります。
番組で使われている「たまるか」は感動や驚きを表す感嘆詞で、「美味しいものを食べた時やプレゼントをもらった時など、感動や驚きの場面で使えます」と西村さん。また「ほいたらね」は待ち合わせの約束をする時などに使う別れの挨拶で、接続語にもなるとのこと。「キャッチーで使いやすいので、高知以外の皆さんも試していただければ」と呼びかけています。
柳井寛(竹野内豊)や朝田結太郎(加瀬亮)らの語尾「にゃー」(台本上は「~ねや」と表記)も視聴者から「かわいい」と好評です。作中の土佐弁は、登場人物の心情や関係性を表現する大切な要素となっており、高知の言葉の温かみが「あんぱん」の魅力をさらに引き立てています。
土佐弁を通して高知の文化や人々の気質も垣間見ることができる「あんぱん」。これからの展開とともに、さらに多くの土佐弁フレーズが視聴者の心に残っていくことでしょう。

林田アナの「ほいたらね!」が視聴者の心をつかむ温かな語り
NHK連続テレビ小説「あんぱん」の語りを担当する林田理沙アナウンサー(35)の締めくくりフレーズ「ほいたらね!」が、視聴者の間で大きな人気を集めています。温かみのある声色と土佐弁の自然な抑揚が、毎朝の視聴者の心を優しく包み込んでいます。
「あんぱん」の制作統括を務める倉崎憲チーフ・プロデューサーは、「朝ドラは週のつなぎ方が大事。『花子とアン』の美輪明宏さんによる『ごきげんよう』のような、金曜日の回を締めくくるフレーズを探していました」と明かします。当初は『アンパンマン』の絵本から、バイキンマンの「バイバイキーン」も候補に挙がったものの、「さすがに寄せすぎ」との判断から、土佐弁の「ほいたらね!」に決定したといいます。
林田アナの「ほいたらね!」のイントネーションについて、土佐ことば指導の西村雄正さんは「僕が吹き込んだテープをお渡ししただけ。バッチリです!」と絶賛しています。視聴者からも「林田さんの『ほいたらね』は、毎回ニュアンスを変えていらっしゃいます。さすがアナウンサーですね」「優しくってなんだかいいですよね!」などの声が寄せられています。
林田アナは各エピソードの内容に合わせて「ほいたらね」のトーンを微妙に変化させることで、その週の物語の雰囲気を的確に表現しています。明るい展開の週は弾むように、重たい内容の週は少し落ち着いたトーンで語ることで、視聴者の感情に寄り添っています。
NHKアナウンサーとしての経験を活かした林田アナの語りは、「あさイチ」の司会・華丸さんも「あんぱんは無駄に引っ張ったり『果たしてどうなる…!』みたいに過度に煽ったりする展開が少ないからその点も好感」と評価するほど。自然体で物語に寄り添う語りが、「あんぱん」の世界観をより豊かにしています。
絶対音感の持ち主とも言われる林田アナは、土佐弁の独特なイントネーションを音として捉え、違和感なく表現していると視聴者から指摘されています。「さすがNHKアナウンサー。地方局への異動もつきものだし、それぞれの地域のアナウンサーとして、地元の良さや環境等も理解しながら、生の言葉も習得し、活用もしないと地域で受け入れられない」との声も。
これから戦時中に突入していく重い展開を迎える「あんぱん」ですが、林田アナの「ほいたらね」は声のトーンで様々なシーンの締めにも対応できるとして、視聴者は今後の展開と共に彼女の語りにも注目しています。地元の言葉を大切にする姿勢と、聞き手の心に届く温かな声で、林田アナの「ほいたらね!」は朝ドラの新たな名物フレーズとして定着しつつあります。
黒井先生の意外な過去と複雑な人間性に迫る
NHK連続テレビ小説「あんぱん」第35話で、これまで厳格な教師として描かれてきた黒井雪子先生(瀧内公美)の意外な過去が明かされ、視聴者に大きな衝撃を与えました。師範学校の卒業が近づく中、「柳井嵩子」の手紙についてのぶ(今田美桜)を詰問する場面で、自身も一度結婚し、3年間子どもができなかったことで婚家を追われたという壮絶な経験を告白したのです。
「女子師範学校生でありながら、ふしだらにもほどがある!」と厳しく問い詰める黒井先生。しかし、もう手紙が来ることはないとうつむくのぶを見た時、黒井先生の表情にはわずかに変化が生まれます。「あなたは、やっぱり弱い」と言いながらも、普段は決して見せない人間らしい表情を覗かせたのです。
この場面について、視聴者からは「黒井先生、バツイチ?」「え?離縁された?」「黒井先生もおつらい経験を…」「黒井先生はこの道しか選択肢がない人だったのね」といった反応が続出。これまで「愛国の鑑」として厳しく生徒を指導してきた黒井先生の背景に、当時の女性の社会的立場や価値観の厳しさが浮き彫りにされました。
瀧内公美の繊細な演技も高く評価されています。「黒井先生の過去を話すたった少しの会話や表情で悲しみや苦しみが垣間見れて、やっぱり中園ミホさんの脚本は素晴らしい」「あの鉄仮面がほんの少しだけ悲しみで歪む瀧内公美さんの繊細な演技、素晴らしかった」といった感想が寄せられています。
黒井先生が辿った道は、当時の社会状況を反映しています。「子をなさない嫁はダメな嫁だ」という風潮は当時一般的であり、「嫁して三年子無きは去れ」というような言葉も存在しました。黒井先生はそうした時代の犠牲者でありながら、自らの力で生きる道として教師を選び、強い女性として生徒たちを導いてきたのです。
卒業式を終え、門で見送る黒井先生の表情には、厳しさの中にも優しさが垣間見えました。「愛国の鑑たれ!」という言葉の裏には、強く生きてほしいという思いが隠されているようです。「黒井先生、厳しいだけの人ではなかった」「先生の最後の言葉がけ(門の所での見送り)やさしさが感じられた。これから頑張れと言う言葉が隠れていた気がする」と視聴者は感じています。
この出来事は、のぶ自身の人生にも大きな影響を与えるでしょう。黒井先生の過去を知ったことで、女性が自立して生きる難しさと強さを学んだのぶが、これからどのような選択をしていくのか。戦争へと向かう時代の中で、黒井先生の教えがのぶの中でどう息づいていくのかも今後の見どころとなっています。
また、敗戦後に黒井先生がどのような人生を歩むことになるのかも視聴者の関心を集めています。「時代が違っていたら、厳しくもあたたかい本当にいい先生だっただろうな」「戦後に再登場して欲しい」といった声が挙がっており、「愛国の鑑」を教え続けてきた黒井先生が、価値観が180度転換する戦後をどう生きるのかにも注目が集まっています。
運命の分かれ道?のぶのお見合い相手登場で物語が大きく動く
NHK連続テレビ小説「あんぱん」の第8週「めぐりあい わかれゆく」から、朝田のぶ(今田美桜)にとって重要な転機となるお見合いの場面が描かれます。予告編で登場した若松次郎(中島歩)は、のぶにとって初めてのお見合い相手。商船学校を卒業し、1等機関士として働く彼は、朝田結太郎(加瀬亮)の知人の息子であり、趣味はカメラという設定です。
若松次郎を演じる中島歩は、2014年度前期の朝ドラ「花子とアン」で九州の石炭王・嘉納伝助(吉田鋼太郎)の妻・嘉納蓮子(仲間由紀恵)と恋に落ちる宮本龍一役を演じ、一躍注目を集めた俳優。朝ドラ出演は11年ぶりとなります。視聴者からは「蓮子の旦那!」「釜次と顔合わせたら絶対揉める~」などの声が上がっており、その登場に期待が高まっています。
お見合いの相手が登場することで、物語は新たな展開を迎えます。視聴者の間では「のぶに縁談!どうする嵩、どうする千尋」「せっかく、地元の小学校に勤めが決まって張り切っていたところではないだろうか」と、のぶの選択に関心が集まっています。
史実では、やなせたかし氏(本名・柳瀬嵩)と小松暢さんは再婚でした。「史実ではのぶはたかしと再婚になっていますが、中島歩さんの役柄がのぶの最初の旦那さんではなくのぶのお見合い相手なのでどうなるのか楽しみ」「モデルの史実とは違う点が多々あるから先が読めない」と視聴者は物語の展開に注目しています。
特に重要なのは、このお見合いが、嵩(北村匠海)との関係に及ぼす影響です。「嵩からの手紙を見返す機会を得たことで、自分にとって『嵩さん』がいかに大切な存在だったのかに、のぶさんは気づいたのではないか」という視聴者の見方もあります。しかし、「もう手紙が来ることはないと思います」と寂しげに語るのぶの様子から、二人の間に溝ができていることも示唆されています。
また、のぶの幼なじみである千尋(田中圭)の存在も見逃せません。「千尋くんがちらっと映っていたのでノブのお見合いの話を聞いて想いを打ち明けられるのかなぁーなんて淡い期待をしてしまいました」と、千尋の行動にも注目が集まっています。
さらに、戦争が激しくなっていく時代背景も物語に影を落としています。「来週はちょっとモヤモヤした週でした」「波うららかに・・の方も戦争の音が近づいてきて、この時代を題材にするなら仕方ないんだろうけれど、しばらくは辛い話になるのかな」と、視聴者は今後の展開に複雑な思いを抱いています。
寛先生(竹野内豊)の言葉「今は平行線でも、いつか交わる日が来る」のように、のぶと嵩の道は今は離れていても、いつか再び交わる運命にあるのかもしれません。お見合いという新たな展開が、二人の物語にどのような影響を与えるのか、視聴者は固唾を呑んで見守っています。
「嵩のゆっくりだけど大らかな愛がいつかのぶに届くのでしょう」「早くアンパンマンたちに会いたいよ~~」と、遠い未来に生まれるアンパンマンの誕生までの長い道のりに、視聴者の期待は高まっています。
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