「あんぱん」が描く戦争時代と三姉妹の物語—メイコの歌声、蘭子の祈り、そして瀧内公美の存在感

目次

メイコが歌う”あんぱんの歌”で魅せる朝田家の日常

朝田家の三女・メイコを演じる原菜乃華さんの魅力が、連続テレビ小説「あんぱん」の世界観をさらに輝かせています。特に第32回で披露された”あんぱんの歌”は、視聴者の心をつかんで離さない印象的な場面となりました。

「あーんぱん あーんぱん ほっぺが落ちたよ朝田パン」「みんながにっこり あんこのパン」と歌いながら町を歩くメイコの姿に、SNSでは「あんぱんの歌を歌うメイコちゃんかわいい」「朝田パンの歌が可愛すぎる」「メイコちゃんのあんぱんの歌、耳に残るんだよなぁ」といった声が続出しました。

この印象的な”あんぱんの歌”は、「あんぱん」の音楽を担当している作曲家・井筒昭雄氏によるものだと制作統括の倉崎憲氏が明かしています。倉崎氏によれば、「朝田パンは店でも販売していますが、日によっては3姉妹が街中を売り歩く姿も描きたかったので、掛け声が欲しいよねという話になって歌詞はチーフ演出の柳川監督が書き、曲を井筒さんに作ってもらいました」とのこと。親しみやすく耳馴染みのいいメロディを意識して選ばれたそうです。

また、メイコが歌う「椰子の実」も視聴者の心を打つ場面となりました。澄んだ歌声で切なく美しい曲を歌うメイコの姿に、「鈴が鳴るような歌声」「透明感と人を癒す力のある歌声」と称賛の声が上がっています。

原菜乃華さんの演技力も見どころの一つです。「実は結構オーバー気味に演じているのだけど、あざとさを感じさせなくて自然な可愛らしさに思える」「長年の演技経験による絶妙な演技力」との評価も。「すずめの戸締まり」では声優としても活躍した原さんですが、朝ドラでのメイコ役では、歌声や愛らしい表情で視聴者を魅了し続けています。

そして見逃せないのが、メイコと健太郎(高橋文哉)の恋模様。「恋をするとめちゃめちゃ可愛い乙女になる」メイコの姿は、「微笑ましいシーンの数々にこちらまで照れてしまいました」と視聴者の心を温めています。健太郎が書いた「のらくろ」がいつか「メイコにとってかけがえのない大事な宝物になっていると良い」という願いも寄せられています。

朝田家の日常を彩るメイコの存在感は、戦争の暗い影が忍び寄る時代の中で、希望の光のように輝いています。「数年後の朝ドラヒロイン間違いない」との声もあり、原菜乃華さんの今後の活躍にも期待が集まっています。「ごちそうさん」で高畑充希さんが歌った「焼き氷の唄」のように、メイコの「あんぱんの歌」も朝ドラの名シーンとして記憶に残ることでしょう。

蘭子の切ない祈り—戦地へ向かった豪への想い

朝田家の次女・蘭子を演じる河合優実さんの繊細な演技が、「あんぱん」の物語に深い感動を与えています。特に第35話で描かれた、台詞のない約20秒のシーンが視聴者の心を強く打ちました。

朝、朝田のぶ(今田美桜)が目覚めると、蘭子が布団にいないことに気づきます。そこで目撃したのは、原豪(細田佳央太)の袢纏(はんてん)に右手で触れ、目をつぶって握り締める蘭子の姿でした。豪の出征から数カ月が経ち、戦地にいる豪の安否を案じる蘭子の切ない祈りがそこにありました。

このシーンについて、SNS上では「毎朝早く起きて、無事を祈っていたんでしょうね」「台詞がなくても、蘭子の祈りが伝わるシーン。それを見つめるのぶ。人を愛するということをかみ締めた瞬間でしょうね」「ただ豪の袢纏に触れていただけなのに、蘭子の気持ちの深さ・哀しみ・祈りが画面から伝わってくる」と多くの反響が寄せられました。

河合優実さんの演技力への称賛の声も相次いでいます。「河合優実という役者の凄みをあらためて思い知るオープニングだった」「河合優実さんの桁外れの演技力 日本を代表する素敵な女優さん」といった評価が見られます。また、「豪ちゃんと結ばれた以降の蘭子の歩き方が一層女性らしく歩いているような気がして、これも意識して演技してるのかな」と細部にまで及ぶ演技への感心も。

注目すべきは、豪の袢纏が作業場にかかったままになっているという設定にも多くの感想が寄せられていることです。「必ず帰ってくるから、帰ってきた時にすぐ着られるように、仕事をする時に困らないように、帰ってくるのを信じているよ」という蘭子だけでなく朝田家全体の思いが表現されていると視聴者は受け止めています。「洗濯して畳んで埃をかぶらないようにしまっておいたって構わないわけだけど、あそこに掛けておく事で、皆の願いがこもった御守りみたいに見えた」という感想は、戦時中の家族の祈りを象徴的に表現しています。

ファンの間では、「豪ちゃん帰って来てよ!って蘭子と一緒に思わず祈りました」という声があると同時に、「豪の生還を期待してしまいますね」「出征して数ヶ月。豪ちゃんの半纏が作業場にずっとかかったままという事実に一番ぐっと来た」と、物語の行方を案じる声も聞かれます。

「一番観たい河合さんの演技」として、「豪が帰郷し再会する時の歓喜全開」を挙げるファンもいれば、「豪の戦死を知った時にどうなるのか」という演技にも注目が集まっています。これは「どちらか1つしか見れないってある意味贅沢な悩み」とも表現されています。

河合優実さん演じる蘭子は、「静かな色気がある」「昔々の田中裕子さんみたいな」と評され、「1流の俳優さんは、その人のキャラクターで、演技をしている。朝ドラで見ても、それはよくわかると思います。それがファンに応えることでもある。だけど、この人は画面作りから参加していて、特定のキャラクターでなくて役柄そのものになりきってる」と、その演技の奥深さが称賛されています。

瀧内公美演じる黒井先生の複雑な背景と教育観

「あんぱん」の物語の中で、瀧内公美さんが演じる黒井雪子先生は、単なる厳格な教師役ではなく、時代背景と個人的な苦悩を背負った複雑な人物として描かれています。5月17日の放送を最後に「卒業」した黒井先生のキャラクターは、多くの視聴者の心に残る存在となりました。

黒井先生は女子師範学校の教師として、のぶ(今田美桜)たちに厳しい指導を行ってきました。一見すると冷たく厳格な教師に見えますが、彼女の背景には深い苦悩がありました。のぶとの対話の中で明かされたように、黒井先生自身も結婚経験があり、「3年で子供ができなかったので、婚家を追われました」という過去を持っていたのです。この告白シーンは、「泣けてくる」と視聴者の感情を揺さぶりました。

この時代背景の中で、「子供を産んで、育てることも女の仕事です」と言う黒井先生の言葉には、彼女自身が社会から受けた痛みが滲み出ています。「時代の被害者」としての黒井先生の姿に、現代の視点からも考えさせられる視聴者も少なくありませんでした。

ドラマの中で黒井先生は「師範学校を卒業して結婚したものの、子どもができず離縁された過去を持っていた」ことが明かされ、「それでいまはお国のためにがんばる女性たちを育成することにすべてを注いでいる」様子が描かれています。彼女の教育方針は時代の空気に合わせたものでありながらも、「機械のように愛国少女を量産していいわけではない」という矛盾も含んでいました。

黒井先生の人物像は、「当時は当たり前だったこととはいえ、黒井の教育方針が正しいとは決められない」という複雑さを持っています。のぶが嵩子と偽って手紙をやり取りしていた件に関しては大目に見てくれた「鬼の目にも涙、武士の情け」を見せる一方で、「お国の決めたモットーを淡々と生徒たちに唱和させ続ける」という姿勢も持ち合わせていました。

瀧内公美さんは自身のSNSで「朝ドラ『あんぱん』ご視聴ありがとうございました 黒井雪子、卒業いたしました」と報告し、「〜花に嵐のたとえもあるさ、サヨナラだけが人生だ〜 ほいたらねっ」という言葉と共に、主演の今田美桜さんとの2ショットを公開しました。この投稿には「えーーー!!もう出ないんですか?」「劇中ではあまり見られなかった素敵な笑顔です」「黒井先生ロス」といったファンからの声が寄せられています。

視聴者からは「金曜日の瀧内さんのシーンはホントに凛とした女性像を演じられていた」「子を産めないことによりつらい思いをされてきたこと、それを越えて仕事に生きる女性を育てることに心血注いでいる姿。金曜日の瀧内さんとシーンが良すぎてある意味神回の一つ」といった評価も。また、「黒井先生、もう出ないんですか?戦後になって自らが教えてきた『軍国主義』の教育を恥じるシーンがあって、そこでまた登場するかと思っていました」と、黒井先生の再登場を望む声も少なくありません。

「今よりも女性が生きる位置が少なく、型にはめられていた時代、黒井先生は辛い時を過ごして教師の道へ。それを知ると、厳しい態度や物言いも生徒のことを思ってではなかっただろうか」という感想にも表れているように、瀧内公美さん演じる黒井先生は、戦前の日本社会における女性の立場と苦悩を象徴する存在として、多くの視聴者の心に残ったのでした。

戦争時代を生きる登場人物たちの葛藤と対立

NHK連続テレビ小説「あんぱん」は、国民的アニメ「アンパンマン」を生み出した漫画家・やなせたかし氏と妻・暢さんをモデルに、激動の時代を生き抜いた夫婦を描く物語です。特に第7週「海と涙と私と」では、戦争の影が色濃くなる時代背景の中で、登場人物たちの価値観の違いや葛藤が鮮明に描かれています。

のぶ(今田美桜)と嵩(北村匠海)は、それぞれ異なる環境で成長し、異なる価値観を持つようになっていきます。家族の一員のような豪(細田佳央太)を戦地に送り出し、妹・蘭子(河合優実)の悲しみを目の当たりにしているのぶと、東京・銀座で文化やファッションの最先端に触れている嵩との間には、大きな温度差が生まれていました。

銀座で嵩が買った真っ赤なハンドバッグをもらったのぶは、「戦地の兵隊さんのことを考えたらこんな派手で贅沢ものはもらえない」と拒み、嵩も「美しいものを美しいといえない世の中に疑問」を呈し、二人の仲は決定的に決裂してしまいます。この対立の場面がシーソーの空き地であるという演出も象徴的です。「どちらかが上がればどちらが下がる。たいてい傾いていて、なかなか平らにならないのがシーソー」であり、二人の価値観の違いが視覚的にも表現されています。

「あんぱん」の魅力の一つは、「徹底してどちらかが正しいというふうにジャッジしない」点にあります。のぶの考え方も嵩の考え方も間違っていないという姿勢は、当時の日本社会の複雑さを反映しています。駅での別れ際に、寛(竹野内豊)がのぶに「いまはふたりの道が平行線ながらいつか交わるときがくるかもしれない」と慰める場面は、のぶと嵩の関係の今後を暗示しています。

このドラマが他の戦争を扱った朝ドラと一線を画しているのは、「戦争中のパートにおいて、『早くこの戦争が終わってくれないか』という事を登場人物に言わせ、そこに視聴者の共感を向けようとするのが割と一般的」だった従来の作品と異なり、「戦前、戦中にも見解の相違があった事を丹念に描いている」点です。これは「花子とアン」の作者である中園ミホ氏の脚本ならではの深みと言えるでしょう。

「腹心の友との決裂、将来の伴侶となるはずの人との見解の相違。どちらが正しいとはにわかには結論が出せないながらも、そのような事を乗り越える、大切な人との心の繋がりがやがては感動の場面をもたらす」という物語の構造は、視聴者の共感を呼ぶ要素となっています。

また、「あんぱん」の特徴として、「あらゆる登場人物のキャラクターの人物設定が非常によくできていて絶妙なバランスを保っている」点も挙げられます。のぶや嵩、蘭子・メイコ・千尋らの若者たちだけでなく、彼らを取り巻く大人たちの存在感も大きいのです。「常に広い心と励ましの言葉で嵩と千尋を包んでいる寛伯父」「娘たちが進む道をバタバタと走り回って全力でバックアップする羽多子」「嵩と千尋の人生を大いに振り回しそれでも嵩が愛してやまない母の登美子」「嵩と共にフラッと御免与にやって来て口は悪いけど美味しいあんぱんでみんなに笑顔を与えてくれるヤムおじさん」など、個性豊かな脇役たちが物語を彩っています。

「根っから悪人と思えるような人物はおらず、ドラマの根底には人の温かさがある」という「あんぱん」の世界観は、戦争という暗い時代を描きながらも、人間の尊厳と希望を失わない物語として視聴者の心を捉えています。「王道のメイコ、反王道の蘭子、ハイブリッドなのぶ」という三姉妹の個性の対比も、物語の奥行きを深めている要素の一つです。

戦争時代を生きる人々の葛藤と対立を丁寧に描きながらも、「個性がすばらしいキャラクターがそれぞれ動いて影響を及ぼしあってそこに面白いストーリーが生まれていく、名作ドラマの王道」を行く「あんぱん」は、単なる戦争ドラマではなく、人間ドラマとしての深みを持った作品として多くの視聴者の心に残り続けるでしょう。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次