朝ドラ「あんぱん」第65話で津田健次郎が魅せた熱演と戦後復興への想い

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メイコの新たな旅立ちと家族の絆

朝田家の末っ子であるメイコが突如として口にした「うち、東京行きたいがよ」という言葉は、家族にとって予想外の出来事でした。これまで家事手伝いとして家庭を支えてきた彼女が、なぜ突然東京への憧れを抱いたのでしょうか。

その背景には、健太郎の存在が大きく関わっているように思われます。戦争で一度は失ったと思った憧れの人との再会は、メイコの心に新たな希望の炎を灯したのでしょう。健太郎が東京での就職を考えているとすれば、メイコが彼について行きたいと願うのは自然な気持ちです。恋は盲目という言葉がありますが、まさにメイコの心境を表しているのかもしれません。

朝田くらの「あの子は、昔のあてなが」という言葉も気になるところです。くら婆の過去に何があったのか、そしてそれがメイコの決断にどのような影響を与えているのか。もしかすると、くら婆自身にも東京での経験があり、それがメイコの背中を押しているのかもしれません。

家族にとってメイコは大切な存在です。のぶの就職が決まり、家族に明るい兆しが見えてきた矢先の出来事に、蘭子をはじめとする家族の心配は計り知れません。しかし、戦後という新しい時代の中で、女性たちも自分の人生を切り開いていく権利があります。メイコの決断は、単なる恋愛感情だけではなく、自立した女性として生きていきたいという強い意志の表れなのかもしれません。

視聴者からも「えっ、メイコ、家を出るのか?」「健ちゃんがいるのに家出?」「あかん、メイコが東京に染まってしまう」など、様々な反応が寄せられています。これらの声からも、メイコがいかに愛されているキャラクターであるかがわかります。

戦後復興期の日本では、多くの若者が新天地を求めて故郷を離れました。メイコの東京行きも、そうした時代の流れの一つと捉えることができるでしょう。家族の絆を大切にしながらも、自分の夢を追い求める勇気。それこそが、この時代を生きる女性たちに必要だったものなのです。

メイコの選択がどのような結果をもたらすのか、そして家族との絆がどのように変化していくのか。彼女の新たな旅立ちは、朝田家にとって大きな転換点となりそうです。

津田健次郎が魅せる東海林明の熱い魂

第65話で最も印象的だったのは、津田健次郎さんが演じる東海林明の圧倒的な存在感でした。闇市でのぶに名刺を渡したことをすっかり忘れていた東海林でしたが、面接の場面では記者としての信念と情熱を存分に発揮し、視聴者の心を掴んで離しませんでした。

「どちらさま?」から始まった東海林とのぶの再会は、まさに予想通りの展開でした。酔っ払った勢いで言ったことを覚えていないのは、ある意味で人間らしい描写です。しかし、のぶの筆記試験や実地試験での実力を目の当たりにした東海林は、彼女の中に確かな可能性を見出したのでしょう。

面接の場面では、津田健次郎さんの演技力が光りました。「彼女は、今の女性たちの代表だというてもええ。戦時下の教育で、多くの純粋な女の子たちが軍国少女となり、敗戦で、自分たちの信じてたものが、いや、自分自身を墨で塗り潰されたがです!」という台詞は、まさに魂の叫びとして響きました。

この場面で東海林が語った言葉は、戦後を生きる多くの人々の心境を代弁していました。戦争中に正義だと信じていたものが一夜にして否定され、自分自身のアイデンティティまでもが揺らいでしまった時代。東海林自身も新聞記者として、戦争を賛美する記事を書いてきた過去があるのかもしれません。だからこそ、のぶの正直な気持ちに共感し、「責任は俺が持ちます」と言い切ったのでしょう。

視聴者からも「朝からツダケンの熱弁は萌える」「津田さんの演技が素晴らしい」「熱い!素敵!」など、絶賛の声が続々と寄せられました。津田健次郎さんの声優としての豊富な経験が、この役柄に深みと説得力を与えているのは間違いありません。

東海林のキャラクターは、調子のいいことを言った後に頭を抱える人間らしさも魅力的です。完璧な人格者ではなく、時には無責任な発言をしてしまう等身大の大人として描かれているからこそ、視聴者は親しみやすさを感じるのでしょう。

「猫の手として採用する」という言葉に対するのぶの「たまるかー!」の連発も、東海林の人柄があってこそ生まれたコミカルな場面でした。のぶを単なる戦力として見ているのではなく、一人の人間として認めているからこその表現だったのかもしれません。

津田健次郎さんが演じる東海林明は、これからのぶの良き上司として、そして人生の先輩として重要な役割を果たしていくことでしょう。彼の熱い魂が、戦後復興期の新聞界にどのような変化をもたらすのか、今後の展開が非常に楽しみです。

愛国の鑑から記者への転身が描く戦後の混乱

のぶが高知新報の面接で直面したのは、過去の「愛国の鑑」という称号でした。かつて軍国主義教育の象徴として新聞に取り上げられたことが、皮肉にも就職活動での大きな壁となったのです。この場面は、戦後日本が抱えていた複雑な問題を浮き彫りにしています。

面接官の「思想はそんなに簡単に変わりますか?」という問いかけは、当時の多くの人々が抱えていた疑問でもありました。昨日まで正義だったものが突然悪とされ、価値観の大転換を迫られた戦後の混乱期。のぶのような純粋な心を持った人ほど、その変化に戸惑いを感じていたことでしょう。

しかし、最も矛盾していたのは面接官たちの態度でした。「愛国の鑑」と称えた記事を掲載したのは、他ならぬ高知新報だったからです。戦時中は軍国主義を煽り、戦後はGHQの顔色を窺う。新聞社こそが最も節操なく思想を変えていたのに、個人の思想転換を批判するのは筋が通りません。

視聴者からも「面接した真ん中の人には心底怒りで震えた。戦争を煽ってきたのは貴方達でしょ」「新聞社が言えることではないでしょう。戦時中、軍の手先として大本営発表を垂れ流し、国民を軍国主義一色に染め上げたのはマスコミだったのではないですか」など、厳しい指摘が相次ぎました。

のぶの回答は、そんな偽善的な大人たちとは対照的に、真摯で正直なものでした。「確かに、私は愛国の鑑と呼ばれていました」「私は、子どもたちに立派な兵隊さんになれと説き、何人もの教え子たちを戦争に仕向けてしまいました」という告白は、自分の過ちを素直に認める勇気ある発言でした。

さらに「アメリカの民主主義が、そんなに素晴らしいものかどうか、私にはまだ分かりません」という言葉は、表面的な思想転換ではなく、本当の意味での自立した思考を示していました。次郎の遺言である「自分の目で見極め、自分の頭で考え、ひっくり返らん、確かなものを、つかみたい」という言葉が、早くも実践されていたのです。

この場面は、戦後復興期における個人の責任と社会の責任について深く考えさせられます。純粋な心で国のために尽くした人々が、戦後になって糾弾される一方で、扇動した側の責任は曖昧にされがちでした。のぶの正直な告白は、そうした戦後社会の矛盾を照らし出す鏡のような存在だったのかもしれません。

「愛国の鑑」から新聞記者への転身は、単なる職業の変化以上の意味を持っています。それは、与えられた正義ではなく、自分で見つけた正義を追求する人生への転換点でした。のぶがこれからどのような記事を書き、どのような正義を見つけていくのか。その歩みこそが、戦後日本の真の復興への道筋を示すことになるでしょう。

嵩の優しさに込められた変わらぬ想い

第65話で最も心に残ったのは、嵩が健太郎と並んで座っている前を、のぶが全力疾走で駆け抜けていく場面でした。まるでアニメのような演出の中で、嵩が口にした「この間より元気そうで、よかった」「俺はね、のぶちゃんが元気なら、それでいいんだ」という言葉は、彼の深い愛情を物語っていました。

嵩にとって、のぶは特別な存在です。幼い頃から共に過ごし、戦争という困難な時代を一緒に乗り越えてきた二人の絆は、単なる幼馴染み以上のものがあります。次郎を失い、深い悲しみに沈んでいたのぶが再び笑顔を取り戻したことを、嵩は心から喜んでいるのです。

「のぶちゃんが元気なら、それでいい」という言葉には、嵩の無償の愛が込められています。自分の気持ちを押し付けることなく、ただのぶの幸せを願う。その純粋で献身的な想いは、見ている人の心を温かくします。しかし、視聴者の中には「しかしたっすいがぁの嵩よ、『僕はのぶちゃんが元気ならそれでいいんだ』じゃねぇよ、天国で千尋が怒ってるぞ」という厳しい指摘もありました。

確かに、嵩には亡くなった婚約者千尋への責任もあります。しかし、戦争で多くのものを失った嵩にとって、のぶの存在は希望そのものなのかもしれません。千尋への愛と、のぶへの想いは、必ずしも矛盾するものではないでしょう。人の心は複雑で、同時に複数の愛情を抱くことは自然なことです。

嵩の優しさは、のぶが記者として新しい人生を歩み始めることへの理解にも表れています。自分も就職活動に苦労している中で、のぶの成功を素直に喜べる心の広さ。それは、真の愛情があってこそ可能なことです。

これまでの物語を振り返ると、嵩はいつものぶのそばにいて、彼女を支えてきました。戦時中の困難な時期も、戦後の混乱期も、変わることなくのぶを見守り続けています。その一貫した姿勢は、彼の人格の高さを示すものです。

今後、のぶが記者として活躍していく中で、嵩との関係がどのように発展していくのか注目されます。史実を知る視聴者にとっては、二人がどのようにして結ばれることになるのか、現在の状況からは想像しにくいのも事実です。しかし、それだけに脚本家の手腕が期待されるところでもあります。

嵩の優しさは、戦後復興期という困難な時代にあって、人と人との絆の大切さを教えてくれます。競争や対立が激化する現代社会においても、嵩のような純粋な愛情は、私たちが見習うべき美徳なのかもしれません。のぶにとって、嵩は「ひっくり返らない正義」の象徴のような存在として、これからも物語の中で重要な役割を果たしていくことでしょう。

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