河合優実の圧巻の演技で魅せる蘭子の慟哭シーン
NHK連続テレビ小説『あんぱん』第38話は、朝田家の次女・蘭子を演じる河合優実の圧倒的な演技力が光る回となりました。いつも物静かで感情を表に出さない蘭子が、最愛の人・豪ちゃんの戦死を知り、その悲しみと怒りを爆発させるシーンは視聴者の心を揺さぶり、多くの人が涙を流しました。
普段は無口で控えめな蘭子が、姉ののぶに向かって「そんなの嘘っぱちや!みんな嘘っぱちや!」と叫ぶ姿は、それまでの静の演技から一転、魂の叫びとなって画面から飛び出してくるようでした。「うちは豪ちゃんのお嫁さんになるがやき。絶対にもんてきてよって言うたがよ。豪ちゃんも、もんてきますって言うたがやき。絶対にもんてきますって。もんてこん…もんてこん、どこが立派ながで!」というセリフには、愛する人を失った女性の切ない思いが詰まっていました。
河合優実の演技の真価は、感情の爆発だけでなく、その前の「静」の演技にもありました。豪ちゃんとの思い出の場所である石置き場で一人佇む姿、切れた鼻緒を直してもらう回想シーンでの恥じらいに満ちた表情、そして現実に引き戻された時の絶望感。セリフがなくても、目の動き、立ち姿、微妙な表情の変化だけで蘭子の心情を伝える河合の演技力に、視聴者は魅了されました。
SNS上では「河合優実の演技に圧倒された」「前半の光が消えた無の演技、後半の怒りと悲しみに満ちた魂の叫び、朝ドラとは思えない」「朝から目がパンパンに腫れるほど号泣した」「彼女の演技の前では、誰もが霞んでしまうほどに圧倒的だった」といった絶賛の声が寄せられました。
河合優実は朝ドラ初出演ながら、その演技力の高さで多くの視聴者の心を掴み、今後の活躍が期待される俳優として注目を集めています。今回の蘭子の魂の叫びのシーンは、朝ドラ史に残る名場面として長く記憶されることでしょう。

ニュース速報が台無しにした朝ドラの感動回
NHK連続テレビ小説『あんぱん』第38話の放送中、最も感動的なシーンの真っ最中にニュース速報が入り、多くの視聴者が落胆する事態となりました。蘭子が豪ちゃんの戦死に対して心の叫びを爆発させるクライマックスシーンで、江藤拓農水大臣の辞任に関するニュース速報が画面に表示されたのです。
「あさイチ」の「朝ドラ受け」も、ニュースセンターからの7分間のニュースに置き換えられ、蘭子の慟哭シーンの感想や解説が行われることなく番組は進行しました。視聴者からは「朝ドラのめちゃくちゃ大事なシーンでニュース速報が入り、あさイチの受けもなくなった。ここまでタイミングの悪い人間いるんだ」「戦争とニュース速報を絶対に許さない」「こんな回で朝ドラ受けをふっとばさせた農水相を絶対に許さない」などの怒りの声が上がりました。
多くの視聴者は、河合優実の熱演による感動のクライマックスに心を震わせていただけに、そのタイミングでのニュース速報は余計に不評でした。「しみじみと悲しみを感じる大事なシーンでニュース速報、しかもバカな発言で辞任提出という速報価値のない内容」「江藤大臣、あんた失言も酷かったけど辞表のタイミングも悪いよ」といった批判の声が相次ぎました。
中には「地震速報とかならまだしも本当にこの手のニュース速報はゲンナリする」「ニュース速報にするような事か?と疑問に感じた」「辞表提出するときはこれから、朝8時15分過ぎてから出せ!」といった意見も見られました。
視聴者の中には「号泣してるとこに『ニュース速報』で、え?何?って我に返っちゃった」「せっかくの入魂の演技がニュース速報に邪魔されたのが残念」「蘭子が豪ちゃんに会いたいと号泣するシーン、涙が出てたのに速報で冷めた」と、せっかくの感動が途切れてしまったことを残念がる声も多く見られました。
結局、多くの視聴者にとって大臣の辞任よりも、朝ドラの感動シーンの方が重要だったようです。このタイミングでのニュース速報は、視聴者の感情の流れを遮り、作品世界への没入感を損なう結果となりました。
愛国心と個人の思いの葛藤に揺れる姉妹の物語
NHK連続テレビ小説『あんぱん』第38話では、戦時中の日本社会における「愛国心」と個人の感情の対立が、朝田姉妹の対立によって鮮明に描き出されました。教師として子どもたちに忠君愛国を教える立場ののぶと、ただ愛する人の無事を願う蘭子の間に生まれた溝は、当時の日本社会そのものを映し出しています。
のぶは「豪ちゃんは、蘭子や、うちの家族や、この国の人らあのために、命を懸けて、戦うたがや。やき、立派やと、言うちゃりなさい」と、公の立場から豪ちゃんの戦死を「立派」と評価することを求めます。しかし蘭子は「男の子は兵隊になって戦争に行きなさい。命を惜しまず戦いなさい。豪ちゃんみたいに名誉の戦死をしなさい。戦死したら、みんなで立派やと言いましょうって?」と問いかけ、「そんなの嘘っぱちや!」と叫びます。
この場面は単なる姉妹喧嘩ではなく、戦時中の「お国のため」という大義名分と、一人の人間としての感情の対立を象徴しています。当時の社会では、戦死した兵士を「英霊」として崇め、家族も「名誉の戦死」として受け入れることが求められました。しかし蘭子の「うちは豪ちゃんのお嫁さんになるがやき」「会いたい…豪ちゃんに会いたい!」という叫びは、そうした建前を吹き飛ばす人間本来の感情の表出でした。
視聴者からは「当時の日本人はみんな洗脳されていたから戦死は名誉、何でもかんでもお国のためだったんだよね。そんなん全部うそっぱちや」「のぶはのぶでつらいな。このまま教師を続けられるだろうか」「のぶも豪ちゃんの戦死をきっかけに愛国心の考え方に疑問を持つようになるのかな?」といった声が寄せられました。
愛国教育者としての立場と、妹の悲しみに寄り添いたい姉としての気持ちの間で葛藤するのぶの姿も、視聴者の心を打ちました。「家族を亡くしても、のっぶは立場上公私ともにそう言わないといけない。涙を流しつつも実妹への発言すら言葉を曲げない姿が痛々しい」という感想もあり、のぶ自身も内心では矛盾を感じていることが伝わってきます。
この愛国心と個人の感情の対立は、やがて「逆転する正義」というドラマのテーマにも繋がっていくことでしょう。戦争という大きな歴史の流れの中で、姉妹それぞれが何を正義と考え、どのように生きていくのか。その葛藤と成長が今後の物語の焦点となっていくことが期待されます。
豪ちゃんの戦死が映し出す戦争の残酷さと悲しみ
NHK連続テレビ小説『あんぱん』第38話で描かれた豪ちゃんの戦死は、戦争がもたらす悲しみと残酷さを鮮烈に視聴者の心に刻みました。若く健康な石工・原豪(細田佳央太)の命が戦場で失われたことは、単に一人の登場人物の死という以上に、戦争によって無数の若者の未来が奪われたという歴史的事実を私たちに思い出させます。
豪ちゃんは出征前夜にようやく蘭子との愛を確かめ合い、「絶対にもんてきます(必ず帰ってきます)」と約束しました。その笑顔と力強い言葉を信じて蘭子は待ち続けましたが、戻ってきたのは冷たい死の知らせだけでした。鼻緒を直してもらうシーンなど、豪ちゃんとの幸せな思い出が回想シーンとして挿入されるたびに、その失われた可能性と未来を思い、視聴者の胸は締め付けられます。
SNS上では「豪ちゃん戻ってきてよと、視聴者側も感情移入した」「豪ちゃんと蘭子、結婚して欲しかった」「朝から号泣。蘭子の気持ちを考えると辛すぎる」「本当の悪は戦争」「戦争なんて、ほんと愚かな事でしかない」といった声が多く見られました。
特に「豪と蘭子が恋に落ちるシーン、なんと美しいんでしょう」「豪ちゃんに会いたいよね、もんてきてお嫁さんになりたかったよね」「二人の笑顔が溢れる家庭が見たかった」といった感想は、戦争によって奪われた二人の幸せな未来への哀惜の念を表しています。
視聴者の中には「髪の毛とヒゲぼうぼうの豪ちゃんが戦後戻ってきてほしい」「こうはなっても、なんかの間違いで、戦争終ったらひょっこり帰ってくることを…信じております」と、戦死の誤報であってほしいと願う声も見られました。それほど豪ちゃんという人物が視聴者に愛され、蘭子との関係に多くの人が感情移入していたことがわかります。
豪ちゃんの戦死は、当時の日本社会の縮図でもあります。「行ってきます」ではなく「行きます」と言わなければならない時代、帰ることを約束できない戦場への出征、そして残された家族は「立派な死」と美化して受け入れることを強いられる現実。「フィクションであっても、ドラマでこんな場面があるたびに戦争はダメだと思わされる」という感想は、多くの視聴者の思いを代弁しています。
豪ちゃんの戦死は物語上の出来事ですが、同じ悲劇が実際の歴史の中で何度も繰り返されてきたという事実を私たちに突きつけます。「昭和のこの時期、何万人何十万人が蘭子と同じく悲しい絶望的な現実を突きつけられた」という言葉は、フィクションを超えた歴史の重みを感じさせます。
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