朝ドラ「ブギウギ」ゴシップ記者鮫島、嫌いだけでは終わらなかった

スズ子が歌手を引退するという発表の記者会見が行われた日、会場は記者で溢れかえっていました。その中には、スズ子や彼女の仲間たちに関するゴシップ記事を数多く発表してきた「真相婦人」という雑誌の記者、鮫島もいました。スズ子は深呼吸を一つして、自身の歌手としてのキャリアを終える決断に至った経緯や思いを語り始めました。

鮫島による「落ち目のスズ子」という表現は、一般の人々の注目を集める効果があったと言えます。もしスズ子が本当に人気を失えば、人々は関心を示さず、報道することもなくなります。無駄に非難する意味もなくなるでしょう。スズ子は、人気が頂点から下降しても、新進のスター、元気で若々しい水樹アユミが現れても、一般の人々からの関心を引き続き集めてきました。これが、鮫島が彼女について書き続けた理由です。
鮫島がスズ子に対して敵意を持った筆致で記事を書いたことは、スズ子側から見れば敵対行為に見えたかもしれません。しかし、物語において悪役が存在することで、主人公の輝きは一層増します。鮫島は、自らを良い人と見せかけたり、感情を露わにしたりすることなく、「スズ子の時代」の終わりに対する惜別と敬意を表現したに過ぎません。ゴシップ記者としての役割から離れれば、鮫島も「スズ子の時代」を支え、励まされた一般大衆の一員だったと言えます。スズ子はそうした鮫島を受け入れ、彼の行動を理解してきました。これは非常に心温まる一幕でした。

今日、鮫島を見ていると、映画『ナチュラル』でロバート・デュヴァルが演じた、スポーツ記者マックスの姿を思い出しました。彼はスターの追跡を続け、一つのスターが去ったら、新たに現れるスターの追跡を始めます。鮫島も今後は水樹アユミや他の新しいスターを追い続けることでしょう。しかし、若くて勢いのあるスターたちが次々と現れる中で、自分自身は確実に歳を取っていくと感じているはずです。そんなとき、自分が輝いていた時代を残したいと考え、自ら退いた福来スズ子のことを思い出すかもしれません。かつて自分が煽った「カルメン腹ボテ」や「子連れ撮影」の日々も、今は懐かしい思い出となるでしょう。追いかけた理由が単に話題性や雑誌の売上げだと思っていたけれど、実は「福来スズ子の生き方が好きだったのかもしれない」「同じ時代を生き抜いてきたことを誇りに思っているのかもしれない」と、今日、初めて気づいたと思います。それは少し遅い気もしますが、画面には映らなかったけれども、記者会見の後にはどこかで一人で焼酎を飲んでいたのかもしれません。

鮫島は以前のように質問をする際にも礼儀を欠くことがありましたが、記者会見の終わりには立ち上がり、帽子を脱いでスズ子に敬意を表する拍手を送りました。今回鮫島が書いた記事は、前向きな内容であり、そのことが良かったと言えます。歌手福来スズ子が本当に引退したことを受け、家で記者会見の記事を読んだ羽鳥善一は、少し寂しそうでありながらも厳しい表情をしていました。スズ子がこれからも羽鳥善一を訪ねる機会があるのかどうか、気になるところです。

このドラマでは、鮫島が唯一の敵役であると言えるでしょう(確かに五木も裏切る行動を取りましたが…)。その中で、みのすけさんが見せた演技は非常に素晴らしいものだったと思います。時には嫌味があるように、また時には卑劣なように見え、視聴者にとってはまさに「嫌な奴」として完璧に演じ切っていたと言えます。この点において、今回の最終回での拍手と笑顔が、みのすけさんにとっては一種の報酬のように感じられたのではないでしょうか。最後に、スズ子を賞賛することができたという点においても。

時代と共に芸能記者の仕事も難しくなってきているように思います。読者と上司の間で翻弄され、過激な表現をせざるを得なくなることもあります。しかし、このドラマを通して、現代の芸能界の原点、いわば第一世代の存在だったことを改めて認識させられるような作品であると感じます。美空ひばりも、神ではなかった前の世代にスポットライトを当てるドラマだったのですね。

鮫島さんに関しては、実はスズ子さんのことを非常に愛していたんだなと思わせるシーンがありました。最後の記者会見では、記者としての鮫島ではなく、一人のファンとしての表情を見せたように感じられました。帽子を脱ぎ、拍手を送る姿は、スズ子への敬意の表現のように感じられました。

その会見はとても良いものでした。笑いもあり、私自身も笑いと涙に包まれました。鮫島は時には余計な発言をしたり、嫌味なことも言いましたが、最後の最後で寂しさを感じさせるような一言を漏らしたのが、私にも寂しさを感じさせました。記事自体はしっかりしていましたし、秋山の久々の登場には驚かされました。東京まで来てしまったほどです(笑)。アユミへのバトンタッチも、素晴らしいセリフでした。スズ子=趣里さんは、やはり面白い存在ですね。

敵味方とは言えないものの、敵であると同時に感心させられる、そんな表情を鮫島さんはしていました。スズ子の素直さや正直さを、実はとても愛していたんだと感じさせるようなシーンもありました。

このドラマだけに限らず、インターネットのコメントや週刊誌、スポーツ紙のゴシップ記事を好まない人は多いです。特に鮫島のように、典型的な厄介な芸能記者として描かれていたが、実際にはタレントや記者、芸能レポーターとの間には、予想外に友好的な関係があることも少なくありません。もちろん全てに当てはまるわけではありませんが。

芸能メディアと芸能人の関係は、お互いに利益を提供し合う「持ちつ持たれつ」の関係にあり、悪いことばかりでなく良いことも報じてくれるため、この関係は一種のプラマイゼロとも言えます。視聴者としては、マイナス面にしか目が行かない傾向がありますが。

ブギウギでは、鮫島の記事に対してター坊などがいつも不満を抱いていましたが、スズ子は比較的冷静で、「あの人たちも仕事をしているから」という理解を示す場面もありました。

朝ドラには根本的な悪役はほとんど登場しないため、鮫島も最終的にはそうなったということです。

週刊誌の記者に対しては、一般に悪いイメージがあるかもしれませんが、実際はそうでもないようです。鮫島も根底にあるのは普通の人間であり、嫌なことを言うのも仕事の一環であるため。ここでは、悪いことばかりではなく、我々が知りたがる様々な情報を求める需要と供給の関係があると言えます。

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