ヘブンが魅了された松江の朝景色
第23話の冒頭では、松江にやってきたヘブンが一夜明けた朝を迎える場面から始まります。米をつく音で目を覚ましたヘブンは、憧れの地である松江で迎える幻想的な朝の風景に深く感動を覚えました。浴衣姿のまま旅館を出たヘブンの目に映ったのは、朝もやに包まれた美しい街並みでした。
遠くから聞こえてくる鐘の音、早朝から響く物売りの声、そして人々が太陽に向かって柏手を打つ姿。これらすべてがヘブンにとって神秘的で新鮮な体験となりました。彼は心の中で「まさにここは神々の国の首都だ」とつぶやき、松江の美しさにすっかり魅了された様子を見せていました。
この松江での体験を、ヘブンは同僚のイライザへの手紙に綴っていきます。手紙には、三味線の音に酔いしれたことや、本物のサムライに会えた喜びが記されていました。彼は日本滞在記を書き終えたら、すぐにアメリカへ帰り、イライザに一番に読んでもらいたいと考えているようでした。
ヘブンにとって松江は、長年憧れていた場所であり、ようやく訪れることができた特別な地でした。朝もやの中で響くさまざまな生活の音、米をつく音、売り子の声、柏手の音。これらの音に目を閉じて耳を傾けるヘブンの姿は、まるで日本の文化そのものを全身で感じ取ろうとしているかのようでした。
視聴者からは、この冒頭シーンについて「まるで映画のワンシーンのよう」「上質な短編映画のようなテイスト」といった感想が多く寄せられました。幻想的な朝の風景は、異邦人であるヘブンの目を通して描かれることで、より一層美しく印象的なものとなっていました。
旅館での朝食の場面では、ヘブンが日本食に驚く様子も描かれています。生卵を丸呑みする姿はまるでロッキーのようだと話題になり、糸こんにゃくを見て虫だと怯える様子は視聴者の笑いを誘いました。異国の文化に戸惑いながらも、好奇心旺盛に日本を体験しようとするヘブンの姿が愛らしく描かれていました。
松江の朝の風景は、ヘブンだけでなく視聴者にとっても特別なものとなりました。日々の生活の中にある美しさ、当たり前の風景の中に息づく神秘性。それらを再発見させてくれる演出は、多くの人の心を動かしたのです。

音響演出が際立つ映像美の世界
今回の放送では、音と映像の使い方が特に際立っていました。視聴者からは「かつてこんなにも音にスポットを当てた朝ドラがあっただろうか」「音と映像が美しい」といった声が多数上がり、その演出の素晴らしさが高く評価されています。
冒頭のヘブンによる英語のナレーションが流れるシーンは、霞がかかったような朝の風景と相まって、まるでハリウッド映画を観ているかのような仕上がりとなっていました。遠くから儚く聴こえる鐘の音、早朝の物売りの呼び声、米をつく音。これらの音は地元の住民にとってはルーティンでも、初めて訪れた旅行者には新鮮に聞こえるものです。
光の使い方も非常に丁寧で、ろうそくやランプの灯りは本物に近い暗さで表現されていました。過去の時代劇では表情が見えるようにライトを当ててしまうことが多かったのですが、この作品ではかなり仄暗く演出されています。それが時代を写しているようで臨場感があり、「暗い時は暗い」という演出が時代を感じさせる要素として機能していました。
山田太一さんの作品「日本の面影」を思い出したという視聴者の声もありました。遠くから儚く聴こえる盆踊りの音色にハーンが「美しい」とつぶやくあの幻想的なシーンと、今回の松江の朝の音と風景が重なって見えたというのです。もしかすると、これはオマージュかもしれないという指摘もありました。
一つ一つのシーンの光量が丁寧に計算されており、まさに映画を見ているような感覚を覚えた人も多かったようです。空気感まで伝わるかのような映像は、まるで旅行して良い景色に出会えたような気分にさせてくれました。情景を軽んずることなく丁寧に描いてくれるからこそ、視聴者は作品の世界に入り込みやすくなっていたのです。
朝靄に包まれた中、人々の暮らしの息遣いを感じる光景について、異邦人の「歌うようなざわめき 私を置き去りに過ぎてゆく白い朝」という歌詞を思い出したという感想もありました。異国の景色は、異邦人であるヘブンの目にも深く印象に残ったことでしょう。
この回の音響演出は、小泉八雲が松江の音に惹かれて日本をますます好きになったという史実とも重なります。深く刻まれた心象風景が、さまざまな作品のベースとなり、大文豪への道を開いたと考えられています。美的情緒たっぷりの演出は、まさに神回と呼ぶにふさわしいものでした。
朝の何気ない風景がこんなに美しいものなのだと感じさせてくれる演出に、多くの視聴者が感動を覚えました。日々の生活が美しい、生活の息吹のある当たり前の光景が美しい。そんな当たり前の美しさに気づかせてくれる、心に響く演出だったのです。
司之介のユニークな牛乳販売シーン
トキの父である司之介が、ヘブンに牛乳を売ろうと花田旅館にやってくる場面は、視聴者の間で大きな話題となりました。旅館の主人から「雰囲気で話すように」と促された司之介は、独特な方法でヘブンとのコミュニケーションを図ります。
司之介は「ワタシハマツノツカサノスケ ギュウニュウでオヌシタスケ カゾクタスケ タベルオチャヅケ」と韻を踏んで自己紹介しました。この片言のラップのような挨拶に、視聴者からは「ラッパー司之介爆誕」「フリースタイルラップ披露するMCツカサノスケ」といったコメントが殺到しました。
ヘブンは司之介の言葉を理解したのか、「オーケイ!」と言って牛乳を一気飲みします。白い髭ができるほどの勢いで飲み干したヘブンは「デリシャス!」とコメントし、毎朝牛乳を配達するよう司之介に依頼しました。この時代の良い牛乳は、今よりも濃かったと考えられており、それがヘブンの舌を満足させたようです。
興味深いのは牛乳の価格設定です。司之介は20銭という値段を提示しましたが、これは旅館の夫婦も引いてしまうほどの高値でした。いわゆる二重価格、インバウンド価格とも言える設定に、居合わせたトキも居心地悪そうな様子を見せていました。それでもヘブンのお給料は月100円であり、20銭で毎日飲んでも月に6円程度なので、気に入ったなら十分に払える金額だったのです。
視聴者からは「あのコミュ力っつーか、ノリの軽さ…流石は司之介」「司之介といい、おじじ様といい、とんでもトンチキで時代錯誤」といった声が上がりました。岡部たかしさんの演技により、ギリギリのところで視聴者から嫌われずに済んでいるという意見もありました。
歴史物とも言える作品でありながら、主人公トキの家族たちの描写になると急に現代風にノリが軽くなる傾向があります。しかし、それが逆に魅力になっているという評価も多く聞かれました。髙石あかりさんをはじめ、岡部たかしさんたちの肩ひじ張らない自然な演技が、その大きな要因となっているのです。
語学を習ってきた視聴者からは「海外で伝わらない時、最後はボディランゲージと教わった。まさに司之介殿、グッジョブ!」という共感の声もありました。英語がひとつも入っていないところが、なお良いという評価もあり、出川イングリッシュのルーツを見たという冒談も飛び出しました。
握手の文化のない国の人に手を差し出したら、ああいうリアクションになりそうだという空想あるあるで笑ってしまったという感想や、一体何を言い出すのかと思ってよく聞いていたら中身がくだらなくて笑ったという声もありました。かつては上級武士だった男が、どんどんお調子者度がアップしていく様子は、カオスでありながらも愛すべきキャラクターとして視聴者に受け入れられていました。
錦織とヘブンの複雑な関係性
錦織とヘブンの間には、何か訳ありな事情が存在することが今回の放送で示唆されました。知事室での会話では不穏な空気が漂い、視聴者の間でも二人の関係性について注目が集まっています。
江藤知事は錦織に対して、ヘブンの世話をしっかりするよう重圧をかけていました。その際、知事は「危ない橋を渡ってまで君を呼び寄せた」という意味深な言葉を口にしています。この発言から、錦織には何らかの問題や事情があり、それを承知の上で知事が彼を招いたことが伺えます。
中間管理職的な立場に置かれた錦織の様子は、見ていて不憫に感じられるものでした。ヘブンは松江の命運を握っているとも言われており、その世話役を任された錦織のプレッシャーは相当なものだったでしょう。二人の人物像については、これから深掘りされていくと考えられています。
錦織がヘブンに話しかける場面でも、二人の微妙な関係性が垣間見えました。襖越しに何度も話しかける錦織でしたが、ヘブンは答えてくれませんでした。最後に教科書を置いて帰っていく場面では、あの自由奔放なヘブンとは違う雰囲気が感じられ、視聴者の心配を誘いました。
聞いていなさそうに見えたヘブンが実は聞いていたという演出も印象的でした。二人の間には言葉を交わす以上の何かがあることを示唆するような場面でした。襖を開けてもらえなかった錦織の様子からは、二人の関係がスムーズではないことが伝わってきます。
知事が言った「危ない橋」という言葉は、多くの視聴者の気になるワードとなりました。錦織には何か過去に問題があったのか、それともヘブンとの間に何か因縁があるのか。さまざまな憶測が飛び交っています。橋つながりで言えば、新聞記者が書いた「歓喜のあまり橋から飛び込んだ」というくだりも意味深に感じられました。
ヘブンがイライザに宛てた手紙の中で、日本滞在記を書き終えたらアメリカに帰ると記していたことも、錦織にとっては気がかりな点だったかもしれません。写真に写っていたイライザの存在も含め、ヘブンの心は完全には日本に向いていない様子が伺えます。
本作は松江で過ごした日々を主に描くとされているため、錦織とヘブンの関係性についても今後詳しく描かれていくことが期待されています。二人にはそれぞれ色々な事情がありそうで、その背景が明らかになっていくにつれて、物語はより深みを増していくことでしょう。
障子越しにヘブンを呼ぶ錦織のシーンは、トキが銀二郎の部屋の前でうるさくわめいていたのと同じような構図だったという指摘もありました。しかし、その軽妙な演出の裏には、二人が抱える問題の重さが隠されているのかもしれません。明日以降の展開が楽しみだという声が多く聞かれました。










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